大量培養した未熟オリゴデンドロサイトを抗原として作成したマウスモノクローナル抗体(clone 4F2)を用いて、ラット前脳から脊髄に至る中枢神経系におけるオリゴデンドロサイトの発生過程を胎生早期から成熟期までの発達段階を追跡しながら、免疫組織化学的手法を用いて検索した。4F2陽性細胞は、胎生早期(E9-E10)からすでに脳室に沿って存在した。分布領域は、一部の領域に限局することなく吻側から尾側に至る広範囲に亘って認められた。4F2陽性細胞は、未熟型ニューロンを認識するTUJ1抗体ではそのほとんどが標識されなかったことから、ニューロンではなく、オリゴデンドロサイトを主として産生する前駆細胞であることが示唆された。4F2陽性細胞は、その後発達とともに、脳室層および脳室下層から脳表面に近い軟膜下まで分布した。生後になると、4F2陽性細胞は灰白質よりも白質に優位に局在するようになった。生後早期では4F2陽性細胞の形態は突起を樹枝状に伸展していたが、成熟期に近づくにしたがって、その突起は繊細で放射状となり軸索を取り囲むように伸長した。胎生期に脳室層および脳室下層に多数認められた4F2陽性細胞は、成熟期においても側脳室の外側上部に残存する脳室下層に存在することから、未熟型のオリゴデンドロサイトが成熟期においても存在することが確認された。脳内のいくつかの領域にすでに移動し分布している4F2陽性細胞が未分化な状態にあるかどうかについては、現在検討しているところである。
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