多分化能を持つ下垂体の前駆細胞からラットでは胎生15日頃分化する成長ホルモン(GH)細胞は、その後数日かけて機能的発達を遂げ、胎生19日になると初めてGH産生を開始する。本研究は、この間に見られる機能的発達の一つが具体的にはグルココルチコイド受容体(GCR)の発現ではないかという仮説を証明するために行われた。 胎生16日-19日のラツト下垂体切片について、免疫二重染色によりとACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の検出を行った結果次の結論を得た。(1)胎生16日あるいは17日下垂体では、殆どのGCR陽性細胞はACTH細胞であるが、胎生18日にはGCR陽性でACTH陰性の細胞が急速に増加しその多くはpit-1陽性であった。すなわち胎生17日から18日にかけてGH細胞(pit-1陽性)にGCR発現が起こることが推定された。 この結果に基づき、未成熟GH細胞にGCR発現およびそれに依存するGH産生を引き起こす因子を胎仔下垂体の初代培養系を用いて検索した。胎生16日ラット下垂体の初代培養細胞を無血清培養液中で2日間培養したところ、予想に反して免疫陽性GH細胞がごく少数認められた。GH細胞数はデキサメサゾン添加培養あるいは12.5%血清を含む培養液中での培養で著しく増加した。GHの発現はグルココルチコイドなしでは起こらないので、上記の結果は、グルココルチコイドがGH細胞にGCR発現を引き起こす因子の一つであることを示している。
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