糸球体足細胞の足突起間はスリット膜と呼ばれる特殊な細胞接着構造によってつながっており、このスリット膜を境にして頂部細胞膜ドメインと基底部細胞膜ドメインが明確に分かれている。このスリット膜の構成要素は現在まで明らかにはなっていない。本研究ではスリット膜の構成要素を明らかにし、上皮細胞の細胞間接着構造との関係を調べることを目的としている。ネフリンはフィンランド型先天性ネフローゼ症候群の原因遺伝子の産物として同定された。我々はラットネフリン遺伝子をクローニングし、その産物について解析した結果、以前得られたラットスリット膜抗体5-1-6がラットネフリンを認識していることが分かった。我々は以前、タイト結合蛋白ZO-1がスリット膜の基部に局在していることを報告している。この結果は、スリット膜がタイト結合から派生したものであることを示唆している。ASIP/PAR3はタイト結合に局在し、細胞の極性決定に重要な役割を演じている。我々は、ASIP/PAR3が足細胞の分化の過程でZO-1と共局在し、成熟した細胞ではスリット膜の基部に局在することを見出した。ネフリンはスリット膜の構成要素であるが、細胞間接着構造には関与しない。ポドカリキシン(頂部細胞膜蛋白)やDPPIV(足細胞膜全体に分布する膜蛋白)は細胞間接着部位からは排除されている。足突起間に形成される細胞間接着構造がいかなる分子によって構成されているかは以前不明である。我々はカドヘリンスーパーファミリーのメンバーであるFATが足細胞スリット膜の構成要素であることを証明した。この分子は腎炎ラットにおいて足突起間に形成された細胞間接着構造にも認められた。
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