生後3周齢のウイスター系ラットの卵巣を除去し、2週間飼育したのち、エストラジオール(E)、ビスフェノール-A(BA)、メトキシクロール(Mx)を、それぞれ8mg充填したシリコンチューブを14日間背部皮下に埋め込み、パイエル板および胸腺の機能形態的変化を検討した。その結果、パイエル板においては、1)E、BA、Mxとどの投与群も非投与群と比べて有意(P<0.05)にパイエル板の大きさを減少させた。またその強さは、E>Mx>BAの順で大きい。2)組織学的には、胚中心のリンパ球密度が著しく減少し、投与の影響は、主に、胚中心に生じることが示唆された。またTUNEL法によるアポトーシス細胞の解析では、TUNEL陽性細胞の数が有意(P<0.05)に上昇し、電子顕微鏡的観察においても、アポトーシス小体を認める多数のリンパ球が投与群において認められた。また、胸腺においては、1)E、BA、Mxとどの投与群も非投与群と比べて有意(P<0.01)に胸腺の重量減少を引き起こした。その強さは、E>Mx>BAの順で大きい。2)組織学的には、皮質におけるリンパ球密度が著しく減少し、投与の影響が、主に皮質領域に起こることが示唆された。電子顕微鏡的観察においても、マクロファージに貧食された多数のアポトーシスを認めるリンパ球が観察された。3)次に、胸腺におけるTリンパ球の分化・成熟に重要な働きのある胸腺因子のmRNAの発現量は、投与群において、著しく抑制された。以上の結果より、これらの化学物質は、パイエル板および胸腺の微小環境に影響を及ぼし、引いては、生体の免疫応答に強く影響を及ぼすことが示唆された。
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