研究概要 |
【方法】 各種濃度(0.03mg〜3mg/mlコーンオイル)に調整した、エストラジオール(E)・ビスフェノールーA(Bis-A)、ゲニステイン(G)を、動物用胃ゾンデを用いて、ウイスター系6週齢の卵巣摘出ラットに1日あたり1mlを、14日間強制連続投与した。コントロール群には、1mlのコーンオイルのみを投与した。動物は、投与開始から、24時間後、48時間後、72時間後、5目後、7日後、14日後の午前に屠殺、小腸(空腸・回腸)を摘出し、常法通りの方法で、光学顕微鏡標本および透過型電子顕微鏡標本を作製し観察した。また、一部の標本は、免疫組織化学的手法およびIn Situハイブリダイゼーション法にてタンパクレベル・mRNAレベルの解析を行った。 【結果】 光学顕微鏡的観察では、0.03mgの低用量E投与群でも、投与後48時間以降の標本で、パイエル板内のリンパ球密度の低下が観察された。電子顕微鏡的観察においては、マクロファージによって貧食されているリンパ球が多数観察され、投与時間に依存してその数は増加した,さらに、それらのリンパ球の変化がアポトーシスによるものか否かを明かにするため、アポトーシス初期シグナルとして発現する7A6抗原をタンパクレベル・mRNAレベルの両面から検討した。その結果、Eの経口投与は、パイエル板におけるリンパ球のアポトーシスを強く誘導することが明らかになった。また、E様作用を有するBis-A、Gについても同様の観察を行なった結果、Bis-Aにおいては、Eの1000倍投与量より、Gにおいては、Eの100倍投与量以上で、Eとほぼ同様の現象をパイエル板に惹起することがわかった。 【まとめ】 以上結果より、経口投与されたエストロゲンおよびエストロゲン様化学物質は、生体の最初の異物バリアーである腸管系の形態的微小変化を惹起すること、またその形態的変化は、おもにパイエル板の主たる構成要素であるリンパ球のアポトーシスによるものであることが判明した。
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