造血微小環境は、ストローマ細胞と総称される間質系細胞より構成され、液性造血因子あるいは機能的接着因子を介して造血刺激(造血促進)機能を有する一方で、異常細胞(クローン)の排除といった監視機構を含めた造血抑制機能を有し、促進、抑制両者がバランスよく機能することにより、正しい造血現象が維持されていることが理解されるようになった。 平成11年度は、この抑制約機構の検討を目的に、ヒト骨髄造血組織を、TUNEL法および細胞表面上の特異的抗原に対するモノクローナル抗体を用いた二重染色法により検討した結果、ストローマ細胞による血球細胞のアポトーシス誘導機能の存在が明らかとなった。ことにstem cell disorderである骨髄異形成症候群(MDS)において、このストローマ細胞のアポトーシス誘導機能が活性化され、異常クローンの増殖抑制に関与していることが明らかとなり、MDSの病態解析における新規知見として現在報告中である。さらにアポトーシス誘導現象の機序解明を目的として、in vitroで安定して継代培養可能な株化MDS由来ストローマ細胞を樹立し、試験管内でのアポトーシス誘導現象の再現系を開発した。この結果ストローマ細胞による血球細胞のアポトーシス誘導には、液性因子の産生と接着因子を介した二つの作用機序の存在が証明された。これら因子は従来アポトーシス誘導因子として報告されてきたFasあるいはTNF等とは異なるものであることが判明し、現在引き続きこれら因子を分離、同定中である。興味深いことにこれら因子の一つが血球細胞の解糖系酵素を阻害することによリアポトーシスを誘導している事実が明らかとなり、その詳細を積極的に検討中である。
|