研究概要 |
有袋類と比較検討するために有胎盤類の解剖を初めに進めた。ネコの解剖をすすめて学術雑誌上に発表した(Tomo et al.2002)。次に有袋類の解剖を進めて、咀嚼筋の分類をその支配神経を用いて哺乳類咀嚼筋の基本的な形を考えてみた。さて有袋類は大きく食肉亜目(opossum, Tasmanian devilなど)と草食亜目(kangaroo, wombat, koalaなど)に分類される。これらが他の有胎盤類の食肉や草食の動物と咀嚼筋においてどのように並行進化をしているのかを考えることが研究の2つ目の目標である。オーストラリア政府Wild Protectionより輸入許可済(平成10年10月12日)の以下の動物を輸入した。草食亜目:カンガルー(Macropus)10頭、ウォンバット(Phascolomis)5頭、食肉亜目:オポッサム(Didelphis)6頭、タスマニアンデビル(Sarcophilus)8頭。この際、固定してあるものは骨標本に適さないので標本は全て冷凍して空輸した。 その後解剖に供するものは10%フォルマリンで固定した後アルコールで後固定をはじめた。また筋の起始、停止を同定するためのみならず、下顎神経の位置の正確な把握のために各動物種で少なくとも1つは骨標本を作成した。 コアラの下顎神経のうち最も高い位置で頬筋神経が分岐した。同神経は外側翼突筋に神経を出した後、側頭筋の前方部最深部に支配神経を出してそのまま前方にはしり頬筋を貫いて頬部の口腔粘膜に分布していた。内側翼突筋を支配する神経は、下顎神経の内側から独立して分岐していた。
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