脾洞の壁を作っている内皮細胞は杆状で、これに直交するたが線維で束ねられている。杆状内皮細胞間には血球が通り抜ける隙間があり、この隙間は脾臓の充血の程度などによって変動すると考えられている。また、カドヘリンやインテグリンなどの接着分子はactin filamentsと結合し組織全体に3次元ネットワークを形成する。そこで、脾洞内皮細胞の物理刺激認識機構や細胞間結合や細胞骨格の動的変化の可能性を調べ、脾洞内皮細胞の能動的機能を解明するため、内皮細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡を用いて調べた。 今まで筆者は、脾洞内皮細胞の微細構造を調べ、生体内においてstress fiberが収縮することや、細胞内に深く陥入した小管系が存在することを報告してきた。これらのことから、内皮細胞の細胞膜とstress fiberに収縮連関があると推定される。脾洞内細胞の血球通過機構を探るため、界面活性剤で細胞質を流出させた標品やオスミウムで膜系のみにした標品を作成し高分解能走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて調べ、内皮細胞の細胞膜系と細胞内膜系およびstress fiberとの位置関係を観察した結果、小管状構造のそばにはキャベオラや、ストレスファイバーがあった。。内皮細胞内には、ミオシンフィラメントを含むアクチンフィラメントの束、小胞体、飲小胞があり、Caイオン濃度による調節を示唆している。培養血管内皮細胞のCaイオン濃度がずり応力に応じて上昇すること、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの収縮弛緩にはCaイオン濃度が関与することなどが報告されていることから、細い小管状構造はCaイオン濃度による調節に関わっている可能性があると考えられる。
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