出生前後にエストロゲンを投与されたヒトや動物では生殖腺の形成異常や、腫瘍が発生する。3週齢の未成熟DESマウス(生後5日間人工エストロゲンであるdiethyl-stilbestrolを投与)に17β-estradiol(E2)を投与し、E2依存性に誘導される核内転写因子であるc-fosとc-junの発現を経時的に子宮において検索した。同時にERの局在を免疫組織化学で証明した。 ERαは、子宮の上皮、間質および平滑筋細胞に局在し、DESマウスと対照マウス(生後ゴマ油を投与)での局在には顕著な差は認められなかった。DESマウスにおけるE2刺激前のc-fos mRNAの発現量は、対照マウスに比べ高かった。対照マウスではc-fos mRNAの発現量は、E2刺激2時間で最大値を示し、DESマウスでは1時間後に最大値を示した。両群ともc-fosの発現は上皮細胞にのみ認められた。対照マウスの上皮はほぼ均一な強い反応を示したが、DESマウスでは上皮細胞間での発現は不均一であった。DESマウスにおけるE2刺激前のc-jun mRNAの発現は、対照マウスより低かった。2時間後、両群ともc-jun mRNAの発現はピークに達したが、DESマウスにおける発現は対照マウスより低かった。E2刺激によってc-jun mRNAの発現は上皮細胞で減少し、間質と平滑筋細胞で増加した。エストロゲン依存性の核内転写因子の発現およびE2による誘導パターンの変化は、すでに内因性のホルモンを分泌していない未成熟マウスでも生じていることが明らかになった。
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