研究概要 |
成長因子によるホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性化と細胞周期G1-S進行との分子連関について、平成11年度において以下の成果が得られた。 1.へテロ2量体PI3キナーゼの触媒サブユニット(p110)、調節サブユニット(p85)各々の優性不活型(DN-)変異体(DN-p110、DN-p85)と、トランスフェクション・マーカーとしてのβ-ガラクトシダーゼをNIH3T3線維芽細胞にコ・トランスフェクションにより発現させた後、成長因子で増殖刺激した。サイクリンD1蛋白とβ-ガラクトシダーゼの発現を二重免疫蛍光抗体法により検出した。その結果、いづれの優性不活型変異体もサイクリンD1発現を特異的に抑制することを見い出した。野生型p85、p110は無効であった。 2.PI3キナーゼがサイクリンD1発現誘導のどのレベルで関与しているかを明らかにするため、PI3キナーゼ阻害剤(wortmannin,LY294002)がサイクリンD1mRNA、蛋白発現のどの段階を抑制するかを、ノーザン解析、ウエスタン解析により検討した。その結果、PI3キナーゼ活性は成長因子によるサイクリンD1mRNA レベル上昇に必要であることが明らかとなった。 3.PI3キナーゼp110触媒サブユニットの構成活性型変異体をβ-ガラクトシダーゼと共にトランジエントトランスフェクションにより細胞に発現させた。血清を除去してG0期へ導入した状態において、β-ガラクトシダーゼ発現細胞のみがサイクリンD1蛋白を発現することを見い出した。 以上から、PI3キナーゼは、成長因子によるサイクリンD1発現に必要かつ十分たりうることが明らかとなった。
|