乳腺細胞等多くの細胞は機械刺激によりカルシウム上昇、ヌクレオチド分泌を起し、それがプリン受容体を介して隣接する細胞にカルシウム波を発生させる。乳腺上皮細胞の細胞内カルシウムの供給源は小胞体であるが、容量性カルシウム流入の関与もあり、またミトコンドリアからの供給もある。本プロジェクトで、われわれは乳腺上皮にある2種類の上皮細胞における細胞間情報伝達にカルシウム波が関与していることや、容量性カルシウム電流の存在、特に妊娠初期の乳腺上皮細胞の増殖期における容量性カルシウム電流の増大を明らかにした。機械刺激による細胞内カルシウム上昇の機構、ヌクレオチド分泌の機構、カルシウム波の役割について総括する。 われわれは機械刺激により発生するCa依存性Kチャネル開口による外向き電流を分析してきたが、同時にClチャネル開口による内向き電流があることが判明した。また、UTPによるATP放出はClチャネル阻害剤ニフルミン酸で抑制される。よって、ヌクレオチド分泌はClチャネルを使っている可能性が高い。パッチクランプで電極内外をATPにし、インサイドアウトシングルチャネル記録を行ってみたが、今のところATP電流は記録できていない。乳癌よりClC3型Clチャネルをクローニングし、培養神経細胞NG108-15に発現させたが、電気生理的測定では、特に変化を認めていない。 本プロジェクトの成果は「生体の科学」に印刷中である。
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