研究概要 |
生体における体液の恒常性維持に重要な役割を果たす腎臓の機能には、尿細管における水・イオン輸送が大きく関与している。近年、分子生物学の進歩により、多くの輸送担体がクローニングされ、分子レベルでの輸送機構が明らかになりつつある。しかし、その調節がどのようになされているかは不明な点が多く、パッチクランプ法を用いたion channelの研究は尿細管イオン輸送の調節機序を解明するうえで重要である。これまでの研究で、近位尿細管ならびに集合管に存在するK^+channelが細胞内pHやATPとともに、protein kinase AおよびCなどによる蛋白リン酸化によっても調節されていることを明らかにし、種々のホルモンなどによる腎機能調節が、セカンドメッセンジャーを介してそれぞれのkinaseを活性化し、輸送担体に働きかけた結果であると考えられた。また、最近では蛋白脱リン酸化も重要であることを明らかにし、近位尿細管細胞のK^+channelにおける蛋白脱リン酸化に関してもすでに学会等にて報告し、論文も掲載予定である(Kubokawa,M.,et al.,Jpn.J.Physiol.,in press)。 なお、現在は新しく設置したパッチクランプ装置にてヒト培養近位尿細管細胞を用いて研究中であり、ヒト尿細管細胞は非常に温度感受性が高く、活性を示すchannelが温度によって異なることを見い出した。すなわち、室温(約22℃)では細胞内Ca^<2+>上昇によると思われるmaxi-K^+channelが頻繁に観察されるのに対し、浴液を35℃まで上げると、maxi-K^+channelが消失し、内向き整流性を示す、生理的に重要であると思われるK^+channelが頻繁に認められ、主にこの後者のK^+channelの調節メカニズムについて研究を進めている。
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