研究概要 |
腎尿細管における水・イオン輸送にはそれぞれの尿細管セグメントに存在するイオンチャネルが大きく関与している。これらのイオンチャネルのうち、数種類のものがクローニングされ、それぞれの分子構造や制御機構に関する報告がなされている。しかしながら、実際に尿細管に存在するイオンチャネルの調節機序は、その細胞膜の特性に左右されることも知られている。本研究では、種々の動物ならびにヒト尿細管細胞を用いて、とくに近位尿細管におけるKチャネルの制御機構とともに、管腔側でのNa/H交換機構の調節と膜電位との関係について研究を行なってきた。まず、オポッサム腎近位尿細管細胞を用いた研究では、膜電位形成に重要な役割を果たすATP依存性Kチャネルが蛋白リン酸化のみならず、脱リン酸化によっても調節されることを直接的に証明した(Kubokawa,et al.,Jpn.J.Physiol.,2000)。また、食用蛙灌流近位尿細管を用いた研究にて、管腔側膜のNa/H交換機構が膜電位変化によっても調節されることを見いだした(Kubota,et al.,Bull.Osaka Med.Coll.,1999)。最近では、正常ヒト近位尿細管細胞を用いて、その細胞膜に存在するKチャネルの研究を行なっており、現在まで、膜電位形成に重要な役割を果たすと考えられる内向き整流性KチャネルがATP、蛋白リン酸化、および細胞内pHによって調節されることを見いだしている(Nakamura,et al.,投稿中)。さらに、ヒト近位尿細管にはATPによって抑制されるCa^<2+>依存性Kチャネルが存在することも見いだしている(Hirano,et al.,投稿中)。以上より、腎近位尿細管に存在するKチャネルの多くは細胞内ATPなどのエネルギー代謝と密接な関係にあり、それぞれ尿細管イオン輸送に寄与しているものと考えられた。
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