胃粘液は、粘膜表面保護に重要な役割を果たしている。本研究に於いては、胃粘液開口放出の調節機構について検討した。コラゲナーゼ処理により得られた単離モルモット胃幽門腺粘液細胞に於いてアセチルコリン刺激は細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を介して、開口放出を活性化した。このCa^<2+>調節性開口放出反応は、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇による細胞容積の減少により増強された。また、低浸透圧負荷、Cl^--free溶液あるいは、ブメタニド投与もアセチルコリン刺激時の開口放出反応を増強した。Cl^-感受性蛍光色素SPQを用いて、細胞内Cl^-濃度を測定した結果は、いづれの条件においても細胞内Cl^-濃度は大きく減少していた。また、アセチルコリン刺激時にも、細胞容積の減少に伴って細胞内Cl^-濃度も減少していた。これらの結果から細胞内Cl^-イオン濃度の減少が、アセチルコリン刺激時の開口放出反応を増強している可能性が考えられた。細胞膜のCl^-透過性を上昇させるため、単離モルモット胃幽門腺粘液細胞をnystatin処理した。SPQ色素を用いた細胞内Cl^-濃度測定結果は、nystatin処理により細胞内Cl^-濃度がコントロールできることを示した。このnystatin処理法を用い、細胞内Cl^-濃度を調節した後、胃幽門腺粘液細胞をアセチルコリン刺激した。結果は、細胞内Cl^-濃度が減少するに従って、アセチルコリン刺激による開口放出頻度は増加した。すなわち、細胞内Cl^-濃度が、アセチルコリンが活性化したCa^<2+>調節性開口放出反応を修飾することが明らかとなった。さらに百日咳毒素処理によりG蛋白質を抑制するとこの開口放出反応の細胞内Cl^-濃度に対する依存性は消失した。この結果は、細胞内Cl^-がG蛋白質を介することにより開口放出反応を調節している可能性が示唆された。
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