研究概要 |
内向き整流Kチャネル(IRK)は脳と心臓で強く発現しており,静止膜電位の保持,活動電位時間の調整などに機能している。マウス・大食細胞からcDNAクローニングされた内向き整流Kチャネル(IRK1)は,250個のアミノ酸(179-428番目)より成る長いC末端領域を持つ。このうちC末端の3個のアミノ酸は神経細胞のシナプス後膜へ局在するシグナルになると報告されている。神経細胞にIRK1遺伝子を導入するために,translational enhancerとしてVEGFの5'非翻訳領域の配列を含むベクターにIRK1遺伝子を挿入した。これをCOS1細胞に導入してウェスタンブロット法で検討したところ,同じプロモーター(CMV)を持つ通常のベクターの場合と比べて4-5倍強く発現していた。このtranslational enhancerを持つIRK1遺伝子をGFP遺伝子と伴にPC12細胞にリポソーム法でトランスフェクトし,同時にNGFを用い神経細胞への分化誘導を試みた。GFPはNGF処理細胞の50-70%に発現し,ウェスタンブロット法でIRK1の発現が観察された。次いで培養8日目の初代ラット海馬神経細胞にPC12細胞と同様にGFP遺伝子と伴にリポソーム法でトランスフェクトを行なったところ,神経細胞の2-3%にGFPの発現がみられた。現在,海馬神経細胞とNGF処理のPC12細胞に導入されたIRK1遺伝子の発現分布様式を免疫組織化学法で検討を行なっている。
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