研究概要 |
内向き整流Kチャネル(IRK)は主に,中枢神経細胞,心臓,骨格筋などに分布し静止膜電位の形成と安定化に関与するチャネルとして機能している。マウス・マクロファージからcDNAクローニングされた内向き整流Kチャネル(IRK1)は250個のアミノ酸より成る長いC末端領域を持っている。このIRK1のC末端領域の神経細胞における機能・役割を解析する目的で,PC12細胞と培養8日目の初代ラット海馬神経細胞にIRK1遺伝子をリポソーム法でトランスフェクトし,導入されたIRK1・遺伝子産物の局在様式を免疫組織化学的方法を用い種々検討を行なったが,発現が弱く明瞭な結論を得ることが出来なかった。このため遺伝子導入の方法をアデノウイルスを用いる方法に変更し,野生型IRK1遺伝子およびtranslational enhancerとしてVEGFの5'非翻訳領域の配列を持ち,かつN末端側にポリヒスチジンのタグが付いたIRK1遺伝子をそれぞれアデノウイルス・シャトルベクターに挿入し,recombinant adenovirus DNAを作成した。それぞれのrecombinant adenovirusDNAをHEK293細胞ヘトランスフェクトし,ウイルス粒子の調製を行なった。得られたウイルスの力価は野生型IRK1遺伝子で約5×105pfu/mL, translational enhancerを持つIRK1遺伝子で約3×104pfu/mLであった。各々をPC12細胞と初代ラット海馬神経細胞に種々のMOIで感染実験を行なったが力価が低く,またウイルス液の毒性が強い為,良好な発現が見られなかった。ウイルス液の毒性除去と力価向上のためにウイルスの精製を試みたが精製過程で急速に力価が低下し,失活したウイルスの低力価および易失活性は挿入したIRK1遺伝子に原因がある可能性が考えられる。
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