研究課題/領域番号 |
11670054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生理学一般
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松尾 理 近畿大学, 医学部, 教授 (40030879)
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研究分担者 |
岡田 清孝 近畿大学, 医学部, 助手 (20185432)
上嶋 繁 近畿大学, 医学部, 助教授 (30193791)
深尾 偉晴 近畿大学, 医学部, 助手 (70218874)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 線溶系 / 血管平滑筋細胞 / 遺伝子欠損マウス / t-PA / u-PA / u-PAR / PAI-1 / 腫瘍細胞 |
研究概要 |
平成11年度において野性型および線溶系因子(u-PA,t-PA,PAI-1およびu-PAR)の遺伝子をそれぞれ単独で欠損するマウスの胸部大動脈中膜組織の酵素消化による細胞分散、または中膜組織片をスクラッチとともに培養器に固定し、エクスプラントさせることによって血管平滑筋(SMC)を単離・培養する方法を確立することができた。これらのSMCは通常の培養(10%ウシ胎児血清を含むDMEM)においていずれも増殖能に差異はなく、これらの線溶系因子の欠損による増殖への影響はみられなかった。 平成12年度においてこれらのSMCとマウスメラノーマ細胞(B16)との共存培養を実施し、SMCとB16との細胞相互間での応答を解析した。その結果、細胞間の接触のある混合培養でも接触のない隔離した2槽培養でも、u-PAR欠損SMCを除き他のSMCの増殖には影響なはかった。一方、B16の無血清培養上清液をSMCに作用させるとu-PAR欠損SMCを除くすべてのSMCに増殖促進効果がみられた。このことからB16からはSMCを増殖させる液性因子が分泌されているものと思われた。上述の共存培養でその効果がみられなかったのは培養系に存在するウシ胎児血清による増殖因子の過剰な供給があったためと思われた。これに対して、u-PAR欠損SMCはB16の無血清培養上清液によって増殖が完全に抑制された。B16無血清培養上清液による増殖効果は細胞内チロシンリン酸化反応を増加させるとともに、MAPK活性も増加させており、増殖因子に特異的な過程が示唆された。u-PAR欠損SMCにはこのような反応がみられなかったことから、u-PARの発現が細胞の増殖に重要な役割を担っていることが示唆された。すなわち、u-PAR単独ではシグナル伝達を発生させ得ないが、インテグリンなどと機能的ユニットを構成する可能性があり、B16由来の因子の刺激がu-PAR欠損によって細胞内に伝達されなかっものと考えられる。またB16無血清培養上清液にはu-PAとt-PAの活性が検出されたが、SMCに作用させた後の上清液にはu-PAは残存したが、t-PAは完全に消失していた。またu-PAR欠損SMCではu-PAもt-PAもほとんど検出されず、増殖抑制と線溶活性とになんらかの関連のあることが示された。
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