研究概要 |
1)心筋局所化学的低酸素に伴う交感神経終末における神経伝達物質放出機序 低酸素、虚血に伴う交感神経終末機能異常のメカニズムを解析する目的で、ダイアリシス法によって心臓交感神経終末における心筋局所化学的低酸素状態によるノルエピネフリン(NE),エピネフリン(EP)放出機序を調べた。ダイアリシスプローベを介したサイアナイドの心筋局所投与でカテコールアミンの放出が起きた。NE放出は、NE再吸収を司る担体輸送の阻害剤、ならびに細胞内Ca^<2+>阻害剤で抑制された。一方EP放出はN type Ca^<2+> channel阻害剤で抑制された。以上の結果は、NE放出がNa^+ overload,Ca^<2+> overloadによって、非生理的な異常な放出機序でおこり、EP放出は生理的な開口性放出で小胞より起こる事が示唆された。 2)心筋局所虚血に伴う副交感神経終末における神経伝達物質放出機序 低酸素、虚血に伴う副交感神経終末機能異常のメカニズムを解析する目的で、ダイアリシス法によって心臓副交感神経終末における心筋局所虚血状態によるアセチルコリン(ACh)放出機序を調べた。冠動脈閉塞による虚血でACh放出が起きた。虚血早期(15分以内)のACh放出は副交感神経の除神経で抑制されたが、一方虚血45-60分後では除神経で抑制されず、細胞内Ca^<2+>阻害剤で抑制された。これらの結果から早期の放出は中枢を介して生理的開口放出でおきるが、その後の放出には局所のCa^<2+> overloadの関与が示唆された。60分間の冠動脈閉塞、再灌流でNa^+・K^+ATPase機能、神経インパルスの伝搬に障害が認められ、神経終末のみならず副交感神経遠心路も機能異常が起きることが明らかになった。
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