時計遺伝子の機能:視交叉上核培養系における検討

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670057
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 本間 さと 北海道大学, 医学部, 助教授 (20142713)
• キーワード: サーカディアンリズム / 視交叉上核 / 神経細胞培養 / 時計遺伝子 / マルチチャネル細胞外記録 / アンチセンス / RT-PCR

研究概要

本研究は、単一視交叉上核神経細胞のサーカディアンリズムを指標に、個々の時計遺伝子や候補遺伝子の機能を明らかにすることを目的として行われた。このため、マルチ電極ディシュ上に視交叉上核細胞を培養し、単一神経細胞から数週間に渡り自発発火リズム測定するという技術を駆使し、アンチセンスや抗体の投与、転写抑制や蛋白合成の阻害が個々のリズム位相にどのように影響するかを検討した。
1.培養視交叉上核におけるサーカディアンリズムと時計遺伝子の発現
新生ラット視交叉上核の分散培養及びスライス培養を行い、マルチチャネル細胞外記録システムを用いて単一神経細胞の発火頻度のリズムを解析した。自発発火を示すニューロンの約80%が、その発火頻度に連続5日以上の有意のサーカディアン周期をもつリズムを示した。RT-PCR法により培養視交叉上核神経細胞が時計遺伝子BMAL1を発現しているかどうかを検討した。PCR産物のシーケンスの結果、培養視交叉上核細胞はBMAL1遺伝子を発現していることが明らかとなった。
2.単一視交叉上核神経細胞のリズム発現と時計遺伝子BMAL1機能
発火頻度に安定したサーカディアンリズムを示している培養交叉上核神経細胞にBMAL1のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびその対照としてスクランブルオリゴヌクレオチドを投与し、その後のリズムの周期および位相に及ぼす影響を検討した。投与量は10μMと5μMの2段階を比較し、投与時間は6時間とした。また、10μMについては12時間投与も行った。その結果、アンチセンスは神経活動リズムの位相依存性に、用量依存性及び投与時間依存性にリズム位相を変位させることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Abe, H.: "Phase-dependent induction by light of rat Clock gene expression in the suprachiasmatic nucleus"Mol. Brain Res.. 66. 104-110 (1999)
• [文献書誌] Abe, H.: "Functional diversities of two activity components of circadianrhythm in genetical splitting mi*(CS strain)"J.Comp.Physiol.A. 184. 243-251 (1999)
• [文献書誌] Masubuchi, S.: "Amplitude reduction of plasma melatonin rhythm in association with an internal desynchronization in a subject with non-24 hour sleep-wake syndrome"Psychiat Clin Neurosci.. 53. 249-251 (1999)
• [文献書誌] Honma, S.: "Light-induced uncoupling of multi-oscillatory circadian system in a diumal rodent, chipmunk, Eutamias Asiaticus"Am.J.Physiol.. 276. 1390-1396 (1999)
• [文献書誌] Namihira, M.: "Daily variation and light responsiveness of mammalian clock gene Clock and its partner gene, BMAL1, transcripts in the pineal body and different areas of brain rats"Neurosci. Lett.. 267. 69-72 (1999)
• [文献書誌] Yu, W.: "Characterization of three splice variants and genomic organization of the mouse BMAL1 gene"Biochem.Biophys.Res.Comm.. 260. 760-767 (1999)
• [文献書誌] Namihira, M.: "Circadian rhythm and light responsiveness of mammalian clock gene, Clock and BMAL1, transcripts in the rat retina"Neurosci.Lett.. 271. 1-4 (1999)
• [文献書誌] Urata, Y.: "Melatonin induces γ-glutamyocystein sythetase mediated by activator protein-1 in human vascular endothelial cells"Free Radical Boil. Med.. 27. 838-847 (1999)
• [文献書誌] Endo, T.: "After-effect of entrainment on the period human circadian system"Jpn.J.Physiol.. 49. 425-430 (1999)
• [文献書誌] 本間さと: "視交叉上核ニューロンにおける概日リズム:リズム発現と時計遺伝子"生体の科学. 50. 169-174 (1999)
• [文献書誌] 本間さと: "生物時計の多振動体機構と時計遺伝子"実験医学(増刊). 17. 2145-2150 (1999)
• [文献書誌] 本間さと: "行動リズムと時計遺伝子機能"Molecular Medicine. 36. 1136-1141 (1999)
• [文献書誌] 本間さと: "生物時計の分子生物学"海老原史樹文、深田吉孝(編)、シュプリンガー・フェアラーク東京. 201 (1999)
• [文献書誌] 本間さと: "脳科学実験マニュアル"本間研一、福島菊郎(編)、 北海道大学図書刊行会. 153 (1999)