研究概要 |
我々はマウスのマイコプラズマ感染という事故のため当初の研究課題を断念し,新しく次の二課題について研究した。1)SAMP2の生涯を通しての生理学的特性と体温調節,2)自発的輪回し運動によるSAMP1のサーカディアンリズムの改善,という二つの課題に変更し,老化,寿命に関する問題にとりくんだ。1)の実験から我々は短命系のSAMP2はコントロール群の長命系SAMR1と比較して生涯を通して食物および水分摂取量,酸素摂取量及び運動量が有意に高く,体重,体温及び毛皮,体脂肪量は逆に有意に低いという結果を得た。この結果はSAMP2では形能的断熱の減少による低体温傾向があり,一方では過剰な食餌性熱産生,過度な運動量はSAMP2の短命化に結びつくのではないかという仮説を導き出した。 2)の実験では短命系のSAMP1を用い,その生理的リズムの違いをSAMR1(コントロール)と比較してみた。その結果,SAMP1では食物摂取量,自発性活動量は明期で増大し,暗期で低下するという異常なサーカディアンリズムを示した。特に暗期での活動量の低下は年とった人や老化動物に認められることからSAMP1はSAMR1より老化の促進がおこっていると考えられる。そこでSAMP1に輪回し運動を負荷させたところ,暗期の活動量(食物摂取量と自発性活動量)が上昇し,明期の活動量は低下傾向を示した。これらの結果は運動負荷はリズムを改善させ,老化を阻止し,寿命延長効果があることを暗示させた。
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