研究概要 |
脳損傷に伴う発熱メカニズムを解明する上で、感染性発熱の機構との差異を明確にすることが重要である。本年度はまずウィルス感染がどのようにして疲労感・発熱等、中枢神経系を介した反応をもたらすかを主に検討し、それを本年度後半から開始した脳損傷モデルの結果と対比する予定である。本研究ではラット深部体温と自発行動量をテレメータシステムにより自由行動下で観察し、これらに及ぼすPolyI:C(2本鎖RNA),インターフェロンの単独投与、および両者の同時投与による影響を検討した。これらの物質はウイルス感染時と類似した反応を生体に引き起こすことが知られている。 ヒト組換インターフェロンα(hrIFNα:30万単位)の腹腔内単独投与ではラットの深部体温と行動量に有意な変化は起こらなかった。Poly I:C(600μg)を腹腔内に単独で投与すると約2時間の潜時で著明な発熱が起こった。Poly I:CとhrIFNαを同時に投与すると、Poly I:C・単独投与時と比べて持続の長い発熱が見られた。しかしいずれの場合もラットの自発行動量に有意な変化は起こらなかった。 Poly I:C腹腔内投与による発熱は、脳血管内皮細胞でのCOX-2の発現を介して引き起こされることが明らかとなった。血液脳関門の実体である脳血管内皮細胞は何らかのメカニズムでウィルス感染を検知し、COX-2を発現し、その結果産生されたプロスタグランジンが脳に作用して発熱などの症状をもたらすと考えられる。
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