1、脳損傷時の発熱は、プロスタグランジン合成阻害剤であるインドメサシンで抑制される。また脳損傷により脳細胞外液中のプロスタグランジンE2(PGH2)濃度が上昇する。すなわち、脳損傷時の発熱にほ感染・炎症時の発熱と同様にPGE2が関与している。 2、感染炎症時には脳血管内皮細胞(主に静脈系)にPGH2合成酵素群(COX-2とmPGES)が共誘導される。この時、脳脊髄液中のPGE2濃度は上昇する。このPGE2上昇はCOX-2阻害剤により抑制される。すなわち、感染・炎症時の発熱ほ脳血管内皮細胞でPGE2が産生され、それが神経細胞に作用することで引き起こされる。 3、一方、脳損傷時にはこれらの酵素群の誘導は弱い。また脳損傷による細胞外液中のPGE2上昇もCOX-2阻害剤では抑制されない。すなわちCOX-2とは異なる酵素が関与している可能性が高い。 4、脳内にはPGE2を合成し得る別の酵素群(COX-1とPGES)が構成的に発現していることが、ウエスタンブロツト法により確認さ肌た。 5、免役組織化学により、COX-1はミクログリア、一部の神経細胞、動脈系血管内皮細胞に、cPGESはオリゴデンドログリアと一部の神経細胞に発現していることが明らかとなった。 6、COX-1とcPGESが共発現している細胞は現在までに確認されていない。 7、COX-1の作用で産生さ肌たPGH2がどのようにしてPGE2に転換されるのか、その機序は未解決である。
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