研究概要 |
ATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)は、細胞内のATP濃度に応じて開閉し、細胞の興奮性を調節する。我々はすでに膵β細胞のK_<ATP>チャネルが、SUR1分子と内向き整流K^+チャネル・Kir6.2分子から構成される事を示した。また、心臓・骨格筋や血管系では、SUR2A/BがKir6.xとチャネルを構成し、低酸素条件下などで筋の弛緩や保護のために働いていると考えられている。 ミトコンドリアにも類似のK_<ATP>チャネルが存在し、エネルギー産生の調節を行っていると考えられるがその分子は不明である。パッチクランプ法により、Jurkat細胞ミトコンドリア内膜よりイオン・チャネル活動の記録を試みた。ATP2mMにより活性が抑えられK^+イオン選択性でコンダクタンスが55pSのチャネルを観察した。このチャネルのキネティクスは、Kir6.1が構成するチャネルと類似であった。また、血管に由来するA7r5細胞をCo^<2+>イオン中で培養すると、Kir6.1蛋白の発現が増加して来ることが分かった。しかし一方、心筋や血管平滑筋の細胞膜では、Kir6.1で構成されるチャネルの活動は観察されなかった。これらの結果に基づき、今後はKir6.1が細胞膜でなくミトコンドリアでK_<ATP>チャネルを構成している可能性について検討する。 一方Kir6.2とSUR1で構成されるチャネルについて両分子が、cAMP依存性蛋白質リン酸化酵素によりそれぞれリン酸化され、独自の機能修飾を受けることを解明した。 さらに、troglitazone、pioglitazone,KAD-1229など、新規抗糖尿病薬のK_<ATP>チャネルへの作用を検討した。この研究は同チャネルの性質・機能の解析として重要であり、また今後のミトコンドリアK_<ATP>チャネルの構造・機能の研究においても有用であると考えられる。
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