研究概要 |
喫煙の胎児に及ぼす影響が問題になっている。本研究では,妊娠ラット及び授乳中のラットにニコチンを摂取させ,新生仔の脳内コリン作動性神経に対する影響を検討し,以下の成績を得た。 1)ラット新生仔の大脳皮質ムスカリン受容体(^3H-QNB結合部位)は,出生直後より徐々に増加し,28〜35日目でプラトーに達した。 2)コリン作動性神経終末のマーカーであるコリントランスポーター(^3H-hemicholinium-3結合部位)も,ムスカリン受容体と同様なタイムコースで増加した。 3)ニコチン摂取により,新生仔のムスカリン受容体およびコリントランスポーターの発達は著しく抑制された。 4)ムスカリン受容体及びトランスポーターの各リガンドに対する親和性は変化しなかった。 5)ニコチンによるムスカリン受容体発現抑制作用は,mRNAレベルでも観察された。 以上の結果は,妊娠及び授乳期のニコチン摂取が,新生仔脳内コリン作動性神経の発達に抑制的に働くことを示唆するものであり,喫煙の胎児に及ぼす影響を検討する上で貴重な神経科学的知見と思われた。
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