研究概要 |
慢性関節リウマチの疾患モデル動物であるコラーゲン誘発関節炎マウスの炎症の進展における肥満細胞の役割を明らかにする目的で、肥満細胞安定化作用を持つクロモグリク酸の新しい経口プロドラッグ、クロモグリカート・リセチル及び新処方中医薬「通痺霊II」のモデル動物に対する治療効果を検討した。炎症の発症が所見スコアで有意となったコラーゲン投与6週後に治療を開始し、8週間にわたって各薬物を1日1回経口投与した。盲検法による炎症所見のスコア、X線写真における骨病変のスコア上昇はいずれも、薬物投与で有意に低下した。関節組織の病理学的観察でも、抑制効果は裏付けられた。以上より、肥満細胞の制御に関与する薬物や「通痺霊II」により、疾患モデルの発症抑制が示された。血中コラーゲン抗体価のELISA定量では、炎症にともなうそれぞれの上昇が薬物で抑制され、これら薬物は免疫系の調節をすることで症状の進展を抑制していることが考えられた。炎症部位では単位面積当たりの肥満細胞数の増加が見られたが、この増加も薬物で抑制された。さらに滑膜など炎症部位では、抗Matrix Metalloproteinases(MMPs)2,3,及び9抗体を用いた免疫組織化学でいずれも染色性亢進が見られた。炎症部位の近傍でも炎症に関連しない毛包では染色性の変化は見られなかった。この染色性亢進も薬物で抑制された。染色性の亢進と薬物によるその抑制は、形態計測法で有意性が示された。さらにMMP2,3,及び9mRNA量の定量を進めている。薬物により肥満細胞の安定化が起こり、MMPsの上昇が抑えられることにより、症状の進行が抑制されたことが推察されるが、作用機構の詳細についてはさらに検討が必要である。以上の結果は肥満細胞の慢性関節リウマチ疾患モデル動物における病態生理学的意義を示すとともに、今回用いた薬剤の慢性関節リウマチ治療への応用の可能性が考えられた。
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