初年度で血液脳関門(BBB)in vitro再構築系の基本構造を作成考案した。パーミアブルサポート構造を基本とし、内部のインサートウェルのフィルター上に内皮細胞、外側のウェルプレート上にアストロサイトを培養する仕組みで、1)膜電気抵抗計による脳毛細血管内皮細胞間の密着結合(tight junction)能評価、2)内皮細胞自体によるエンドサイトーシス(内包化による細胞膜通過機構で、液相(pinocytosis)・吸着・受容体調節性の3種類に機能が分化している)機能評価のために、内部・外部チャンバー内の細胞培養液を灌流させたり、受容体に結合させる放射性リガンド、Lucifer yellow等の色素の添加・採取のためのルート設置など、ダイフージョンチャンバーの構造となっている。BBB細胞株GP8.3細胞(SV40レトロビールス法で不死化されたラット脳毛細血管内皮細胞由来細胞株、申請者の実験室で株細胞として維持されている)と混合培養されるアストロサイトの培養条件も確立された。 虚血再潅流条件;培養液を脱酸素化し、Hypoxiaキットで低酸素刺激し虚血を負荷した。再酸素化を行いBBB機能を評価した。低酸素刺激1、3、6時間のいずれの条件でも、再酸素化3時間で、内包化による細胞膜通過機構によるBBB機能亢進が観察された。この機能亢進は、マウスミクログリア細胞株N9細胞の共培養下で、著明に改善された。この治療効果は、非可逆的セリンプロテアーゼ阻害薬AEBSF(200μM)存在下で有意に抑制された。組織型プラスミノーゲン・アクチベーター(tPA)も同様に改善効果が観察されたが、AEBSFによる修飾は観られなかった。ミクログリア細胞株N9のBBB保護作用は、tPA以外のセリンプロテアーゼの分泌と関連があることが示唆された。
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