研究概要 |
神経内分泌因子として、アンギオテンシンII,エンドセリン、エピネフリン、フェニレフリンなどを調べたが,モルモット心室筋のホールルクランプ法で記録したNCX電流は変化しなかった。そこでNCXの燐酸化について調べた。化学的脱燐酸酵素と言われる2,3-butanedione monoxime(BDM)はNCX電流を抑制した。しかし、A-キナーゼやC-キナーゼを活性化させてもNCX電流は変化しなかった。更に、燐酸化部位を除いたNCX遺伝子変異体でもBDMはNCX電流を抑制したので、BDMによる心筋NCX抑制には燐酸化、脱燐酸化が関与していないと結論した。 次にNa-H交換のNCXに対する影響を調べた。電極内液のpH緩衝剤を低濃度にし、外液酸性化やCキナーゼ活性化によりNa-H交換を活性化すると、NCX電流の逆転電位が負に移動した。Na-H交換阻害薬存在下では移動しなかった。これはNa-H交換により細胞内Na濃度が高まることを示唆する。つまり、NCXはNa-H交換を介して、細胞内Na濃度やpHの変化により間接的に調節されている可能性がある。 今回の実験から、細胞内液のCaキレート剤やpH緩衝剤が、アゴニストによる細胞内情報伝達系に何らかの制限をしている可能性が示唆されたので、今後穿孔パッチ法などを用いて実験を行なう必要がある。 また、NCXの調節に細胞内のATPが、PIP_2を介して関与しているという報告があるので、今後、PIP_2を介する情報伝達系をターゲットとするアゴニストの作用を調べたい.
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