(研究1)糸球体腎炎の発症・進展におけるMAPキナーゼとc-Junの役割解明を目的とする。抗thy1抗体投与によるラット糸球体腎炎モデルでERK、JNK、AP-1の活性を測定したところ、腎炎発症30分後に糸球体細胞でERKとJNKが著明に活性化され、さらに3時間後にAP-1(c-Fosとc-Junで構成されている)の著明な活性化がみられた。そこで、ERK、JNK、c-Junのそれそれのドミナントネガティブ変異体をHVJ-リポソームに封入し、ラット大腿動脈を介して腎動脈内から腎臓内に注入することにより遺伝子導入し、ERK、JNK、c-Junそれぞれの糸球体細胞での活性化を抑制した。そして、糸球体腎炎の発症・進展に対する抑制効果を検討するために、ノーザンプロット法により糸球体でのTGF-β1、コラーゲン、フィブロネクチン等の遺伝子発現、糸球体細胞の増殖とアポトーシスについて現在解析中である。 (研究2)ERK、JNK、c-Junそれぞれの野生型遺伝子をHVJ-リポソームに封入し腎動脈内から腎臓に注入することにより正常ラットの腎糸球体でそれぞれの遺伝子を過剰発現させた。そして、それぞれの過剰な活性化が、糸球体にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、糸球体でのTGF-β1、コラーゲン、フィブロネクチン等の遺伝子発現、糸球体細胞の増殖とアポトーシスについて現在解析中である。 このように、現在、解析中のパラメーターの検討が終了すると、糸球体障害におけるMAPキナーゼとc-Junの活性化の意義が明らかになる。
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