μオピオイド受容体の情報伝達に関わるG蛋白質αサブユニットを同定するために各サブユニットに特異的な核酸製剤のデザインを試み、ラット脳内に投与し、発現抑制効果・特異性・モルヒネ鎮痛に与える影響を検討した。 Gi1〜3α、Gsαについては翻訳開始領域に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS-ODN)を、Goαについては2箇所の翻訳領域に対してAS-ODNを作製した。Gi1αとGoαについては、特異性を高める目的で17-18merの短いAS-ODNも作製した。AS-ODN及びセンスODNは、phosphorothioate型でHPLC精製し、1.7nmolを48時間毎に3回、中脳水道周囲灰白質に投与し、Gi1-3α、Goα、GsαのmRNAと蛋白量の変化を検討した。Gi1αに対するAS-ODNでは、発現が抑制されたが、Goαの発現も抑制された。標的とした部位の3'側でGi1のとGoαとの間に12baseの相同性があったため、3'側を5base削った17merのAS-ODNではGoα発現への影響は減弱した。このAS-ODNやGoαに対するAS-ODNの投与で、モルヒネ鎮痛の効果が減弱した。 上記のようにAS-ODNでは特異性に一部限界があったため、塩基配列の識別能が高いとされるリボザイムとDNA酵素をデザインした。リボザイムの脳内投与では、十分な発現抑制効果を得ることができなかった。一方、両末端を0-メチル化したDNA酵素の脳内投与では、部のものに発現抑制効果が認められた。さらにそれらの特異性を検討したところ、AS-ODNより高い特異性が得られた。特異性の向上したDNA酵素を脳内投与してモルヒネ鎮痛の抑制効果を検討したところ、Gi1αやGoαに対するDNA酵素でモルヒネ鎮痛の効果が抑制されることが確認され、AS-ODNでの結果と一致した。 これらのことより、μオピオイド受容体の情報伝達に関わるG蛋白質αサブユニットは、部はGi1αやGoαであることが示唆された。
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