研究概要 |
1)糖尿病ラットは対照群に対し血糖値とともに血漿ET-1濃度が有意に上昇していた。この週齢において血漿ET-1量と血糖値、血漿LDL,triglyceride濃度には有意な相関関係があった。STZ投与1週間後では血糖値、血漿ET-1量の有意な増加が認められたが、他の血中成分(HDL,LDL,triglyceride)においては対照群と変化はなかった。以上のことから血漿ET-1濃度上昇には血糖の上昇が直接的な引き金になっていることが示唆され、血中脂質の関与はないことが明らかとなった。 2)糖尿病ラットにプラヴァスタチンを慢性投与すると、内皮細胞依存性弛緩反応は著明に改善された。対照群、糖尿病ラットおよび糖尿病ラットにプラヴァスタチンを慢性投与した動物の血液を採取し、LDLを抽出した。対照群のラットLDLはほとんど酸化されないが、糖尿病ラットから得られたLDLは銅イオンによって著明に酸化された。糖尿病ラットにプラヴァスタチンを慢性投与したラットから得られたLDLは酸化されにくいことも明らかとなった。対照群のラットから得られたLDLを正常血管に適用しても著明な変化は見られなかったが、糖尿病ラットから得られたLDLを正常血管に適用すると、内皮細胞依存性弛緩反応が著明に減弱することが明らかとなった。糖尿病ラットにプラヴァスタチンを慢性投与した動物から得られたLDLは内皮細胞依存性弛緩反応を変化させず、また、糖尿病ラットから得られたLDLを正常血管に適用する前に活性酸素を消去するSODを処置すると、この減弱反応が消失したことから、次のようなことが考えられる。糖尿病ラットの血中に存在するLDLは酸化されやすいことから、酸化LDLになっていることが容易に推測され、この酸化LDLは正常血管の内皮細胞依存性弛緩反応を著明に抑制する。 3)糖尿病ラットにインスリンを投与すると、内皮細胞の機能は著明に改善した。ノルアドレナリンによる収縮反応は、糖尿病ラットにインスリンを投与した群において著明に増加していた。糖尿病ラットにインスリンを投与すると、α1B及びα1DのmRNAはいずれも著明に増加していた。つまり、糖尿病病態にインスリンを投与すると、内皮細胞の機能は改善するものの、平滑筋の収縮能が上がり、血圧が上昇するという結果が得られたことになる。
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