免疫グログリン(Ig)スーパーファミリーに属する膜糖蛋白ベイシジシ(Bsg)は細胞外に2つのIgドメインを有する。そのノックアウトマウスを作製して解析すると1)着床期での多数の死亡2)生後1ヶ月以内の間質性肺炎による死亡3)精子形成不全、卵成熟不全、着床不全による両性の不妊4)記憶学習能力の著しい低下が明らかになった。本研究では1)精子形成におけるBsgの役割の解明2)Bsgのホモオリゴマーの形成機序とその生理的意義の解明3)Bsgと相同性を持つエンビジンとのクロストークの可能性の3点に目的を絞って解析を進めたが本年度は特に2)と3)に力点を置いた。 Bsgのホモオリゴマー形成はシス型の(つまり同一細胞表面上の)ものであり、それにはN末側のIgドメインが重要であることが判明した。Bsgとエンビジンとのオリゴマー形成は見ることができなかった。Bsgノックアウトマウスの解析は網膜まで及びelectroretinogramと組織学的解析の結果、桿体細胞、錐体細胞両者の機能ともBsgノックアウトマウスではほとんど消失し、加齢に伴って廃用性萎縮がおこった。色素上皮にBsgの発現が強いことからこの部位でのBsgの機能が視細胞の生存あるいは維持に必要であると考えられた。 本研究はBsgの機能発現に関わることが予想されるホモオリゴマー形成機構の一部を解明し、また新たな機能発現の場として網膜をクローズアップしたといえる。今後その作用機構のさらなる解明のためにはBsg細胞内ドメインの結合蛋白の同定、Bsg受容体の同定が急務となると考える。
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