細胞の形態形成におけるERM蛋白質の活性化 前年度、C末リン酸化ERM蛋白質(CPERM)の細胞内局在決定に必要な、トリクロロ酢酸(TCA)固定法を開発したが、それによって、細胞内のERM蛋白質の活性化の機序がかなり詳しく理解できるようになった。 1:Rhoの活性の役割 Rhoを不活化する、C3毒素をL細胞などに注入し、その後、TCA固定を行って、細胞内のERM蛋白質全体、また、CPERMの局在を検討した。Rhoの不活化により、すみやかにERM蛋白質の脱リン酸化が見られ、またERM蛋白質は微絨毛から細胞質全体へとその局在を大きく変化させた。 2:ERM蛋白質のリン酸化の重要性 蛋白質リン酸化酵素の阻害剤、スタウロスポリンをL細胞などに作用すると、すみやかにCPERMが脱リン酸化し、ERM蛋白質は細胞質へ移行した。これらのことは、細胞膜とアクチン繊維とのクロスリンカーとしてERM蛋白質が微絨毛で機能するためには、リン酸化していることが実質的に必要であることを示すと共に、その実質的な活性化機構にRhoの活性が深く関わることを示している。 3:PIP2の必要性 リン脂質、PIP2は試験管内でERM蛋白質を活性化させることが知られているが、PIP2に結合してその機能を阻害する薬剤、ネオマイシンを細胞に注入すると、それによっても、ERM蛋白質の脱リン酸化、不活性化がおこった。さらに、いくつかの培養細胞について実験をすすめた結果、Rhoの活性また、CPERMの存在はERMの活性化に必須ではないことがわかってきたが、PIP2だけはいずれのケースでも必要であることがわかった。よって、ERMの活性化にはPIP2が直接的に必要で、ERM蛋白質のリン酸化は活性化そのものに必要ではないが、活性状態を安定化させる重要な役割があることが明らかになった。
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