Ralとその下流に存在する蛋白質のエンドサイトーシスの制御における作用を解析した。本年度は (1)活性型Ralと優性抑制型Ralを細胞に発現させると、両者ともにA431細胞のEGFレセプターとCHO-IR細胞のインスリンレセプターのエンドサイトーシスを抑制したことから、Ralのシグナルがエンドサイトーシスの制御に関与することを明らかにした。 (2)Ralの標的蛋白質RalBP1のRal結合部位と、POB1結合部位を含むC-末端領域により、EGFとインスリンのレセプターのエンドサイトーシスが抑制された。またPOB1のRalBP1結合部位も上記のエンドサイトーシスを抑制した。一方、リガンド非依存性のトランスフェリンレセプターのエンドサイトーシスには、Ral、RalBP1、P0B1やその断片蛋白質は影響しなかった。したがって、Ral-RalBP1-POB1というシグナル伝達経路がリガンド依存性のレセプターのエンドサイトーシスを制御していることが示された。 (3)ヒトEpsinを出芽酵母に過剰発現すると温度感受性になることを見出した。Epsinと相互作用する蛋白質はこの形質を抑制する可能性があるので、ヒトcDNAライブラリーからこの形質を抑圧する蛋白質をスクリーニングする系を確立しつつある。このスクリーニング系によりEpsinと相互作用する新規蛋白質が単離されればEpsinによるエンドサイトーシスの制御機構がさらに明らかにされると期待される。 以上、本年度の研究目標は達成できたと考える。
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