研究概要 |
アナンダミド加水分解酵素は,カンナビノイド受容体の内因性アゴニストとして発見されたアナンダミド(N-アラキドノイルエタノールアミン)をアラキドン酸とエタノールアミンに水解して,その生物活性を失わせるアミダーゼである。ラット肝由来の同酵素のcDNAを用いてバキュロウイルス昆虫細胞発現系で組換え酵素を大量に発現させ,高度に精製した。この精製酵素を用いて同酵素の触媒するアナンダミド加水分解反応の可逆性を証明するとともに,反応の平衡定数を決定した。また,ブタ脳から同酵素のcDNAをクローニングした。ラット・マウス・ヒトの酵素とのアミノ酸の同一性はそれぞれ81,80,85%であった。ブタの組換え酵素はラットの酵素と同様に,アナンダミドに加えてオレアミド(内因性催眠誘導物質),2-アラキドノイルグリセロール(カンナビノイド受容体のもうひとつの内因性アゴニスト)およびアラキドン酸のメチルエステルを加水分解した。この酵素が属するアミダーゼ・ファミリーでよく保存されているいくつかのアミノ酸残基を,部位特異的変異法でアラニン等に置換したところ,いずれの変異体も上記すべての基質に対する加水分解反応が,ほぼ消失もしくは著しく低下した。一方,ヒト巨核芽球系白血病細胞(CMK)に見出されたアナンダミドに対する加水分解酵素は,至適pHが酸性であること,ジチオトレイトールによって活性化されること,既知の酵素に対する阻害剤のフッ化フェニルメチルスルホニルやメチルアラキドニルフルオロホスホネートによってほとんど阻害されないこと等から,既知の酵素とは異なるアイソザイムであると考えられた。
|