研究概要 |
アナンダミド加水分解酵素は,カンナビノイド受容体の内因性リガンドとして発見されたアナンダミド(N-アラキドノイルエタノールアミン)をアラキドン酸とエタノールアミンに加水分解して,その生物活性を消失させるアミダーゼである。分子量63kDaの膜蛋白であり,至適pHが9付近にあり,フッ化フェニルメチルスルホニルやメチルアラキドニルフルオロホスホネートのようなセリン水解酵素阻害剤によって強く阻害される。本研究において,ヒト巨核芽球系白血病細胞(CMK)にアナンダミド水解活性を見出した。この反応を触媒する酵素は,界面活性剤を用いずに凍結融解のみで膜から可溶化されること,至適pHが約5であること,セリン水解酵素阻害剤による阻害効果が弱いこと,ジチオトレイトールによって活性化されること,およびアナンダミドよりもN-パルミトイルエタノールアミンを良い基質とすることから,既知の酵素とは異なるアイソザイムと考えられた。同様の性質を示す酵素の臓器分布をラットで検討したところ,肺で最も強い活性が認められ,次いで脾臓,胸腺,小腸などの順で検出された。界面活性剤が肺の酵素に及ぼす影響を調べたところ,Tween 20が強い阻害作用を示したのに対し,Triton X-100は活性を最大で7倍高めた。各種クロマトグラフィー等を用いて肺の12,000xg沈渣から酵素を精製した結果,SDS電気泳動で分子量31kDaに相当する位置に主要なバンドが認められた。精製酵素を0.1% TriotnX-100の存在下で種々のN-アシルエタノールアミンと反応させたところ,N-パルミトイルエタノールアミンを最も効率良く水解した。以上の結果から,既知のアナンダミド加水分解酵素と区別されるN-アシルエタノールアミン水解酵素が動物組織に存在することが明らかになった。
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