研究概要 |
アクチビン・フォリスタチン系は、細胞増殖、分化、初期発生過程、発癌、可塑性の制御などに関わるペプチド性細胞増殖分化調節因子である。本研究においては、アクチビンの神経系における情報伝達機構と新規フォリスタチン様因子の細胞生物学的、生化学的解析を主に行い、アクチビン・フォリスタチン系に新たな細胞内外の調節、制御機構が存在することを明らかにした。 アクチビンのタイプII受容体セリンキナーゼと会合する神経系特異的分子(ARIP 1,activin receptor interacting protein 1)を同定した。この分子は、神経細胞の細胞膜近傍において、受容体と細胞内情報伝達因子Smadを局在化させ、アクチビンの神経細胞における情報伝達を制御している。神経細胞においては、シナプトタグミンと局在を共にすることより、シナプス部に存在する。 細胞外のアクチビンの機能調節因子、結合蛋白としてフォリスタチンが知られていたが、本研究において、新規のフォリスタチン様活性を有する分子(FSLP,follistatin-like protein)を同定し解析を行った。この分子は、アクチビンなどのTGF-βファミリーやPDGFファミリーの活性を細胞外から調節する新規細胞分化調節因子である。FSLPは2つのフォリスタチン相同領域を有するが、そのうち、C末側の領域においてアクチビンと結合する事が判明した。遺伝子破壊マウス作製のため、マウスのゲノム構造を決定した。約8キロベースに渡る遺伝子で、5つのエクソンから成り、それぞれのエクソンにより、シグナルペプチド、N末領域、2つのフォリスタチン相同領域、短いC末領域がコードされている。今後、遺伝子改変マウスの作製に取り組む予定である。
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