研究概要 |
分子シャペロンのHsp70や14-3-3蛋白質には、蛋白質の折りたたみの制御や細胞内蛋白質の輸送など、様々な生理活性が報告されているがその機能を説明する分子基盤はいまだ明確でない。また蛋白質分解酵素が基質である蛋白質の立体構造をどのようにほどいて、分解するかも今だ明らかにされていない。平成11〜12年にかけての研究において、分子シャペロンのHsp70や14-3-3,蛋白質分解酵素のプロテアソームのC_5とC_8サブユニットに共通するシャペロン型ヌクレオチド2リン酸キナーゼ(NDPK)活性を明らかにしてきた。則ちこれらの蛋白質は、ヌクレオチド2リン酸と3リン酸でのリン酸基の転移反応を触媒する。さらにNDPK活性の阻害剤のquercetinによりHsp70のシャペロン活性や、プロテアソームの熱変性蛋白質凝集塊阻止作用とプロテアーゼ活性が同時に阻害されることを明らかにした。このように分子シャペロン蛋白質やプロテアソームの機能発現にNDPK活性が大きくかかわっている。またHsp70の持つNDPKの活性中心を同定するため、リン酸基転移反応の途中に見い出される自己リン酸化アミノ酸の同定と、NDPK反応に直接かかわる活性中心の検索を行った。その結果Hsp70の自己リン酸化反応中間体は、204Tと211Tのリン酸化であることと、従来Hsp70のATPaseとしての活性中心と報告されていた部位以外に、227H,231E,232Dが新たなATP結合領域として作用していることが推定された。今後分子シャペロン作用におけるNDPKのさらなる詳細な解析を進める。
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