レチノイン酸は細胞分化増殖および発生に関わる生理活性物質である。生体内では様々なステップでその生理活性発現の調節が行なわれている。その中でレチノイン酸代謝は重要な調節ポイントの一つである。我々はシトクロムP-4501A1(CYP1A1)がin vitroでレチノイン酸合成酵素であることを証明した。このレチノイン酸生合成はO^<18>を使用し、レチナールモノオキシゲナーゼであることをレチナールへのO^<18>の添加により確認した。このP-4501A1が細胞、特に皮膚のfibroblastにとって紫外線防御作用に必須であることを発見した。その傍証として、細胞内でレチノイン酸合成酵素は現在4種類の存在が確認されているが、色素性乾皮症(XP)のfibroblast細胞は、シトクロムP-4501A1(CYP1A1)が欠損し、レチノイン酸合成活性も著しく低下していることが確認された。In vitroの実験、特に培養細胞等ではall-trans又は9-cis-レチノイン酸添加で紫外線照射による細胞死が著しく減少することが分かった。それ故、レチノイン酸が紫外線照射による細胞死を減少させる機構についてはいろいろ考えられるが、現在検討中である。レチノイン酸を添加すれば、紫外線保護作用が顕著であった。また、レチノイン酸受容体については正常細胞やXPの2種のレチノイン酸受容体(RARαとRARγ)についても質的並びに量的にも解析したが、全く異常なく同じ量であることが確認された。 現在、CYP1A1とレチノイン酸代謝との因果関係を調べる別のアプローチとして、CYP1A1の主な調節転写因子であるArylhydrocarbon Receptor(AhR)及びそのヘテロ2量体パートナーであるAhR Nuclear Translocator(ARNT)の遺伝子欠損マウスを使ったin vivoでの実験系を考えている。
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