研究概要 |
我々は、オピオイド受容体類縁体受容体の内因性リガンド、ノシスタチン/オーファニンFQ(Noc/OFQ)の前駆体蛋白上に、Noc/OFQの痛覚反応を抑制する生理活性ペプチドを見いだし、ノシスタチン(NST)と名づけた。本研究は、NSTがNoc/OFQ受容体には結合せず、それ自身の受容体の存在が示唆されたことから、NST受容体cDNAのクローニング及び情報伝達系の解析と2つのペプチドの産生制御機構の解析を行い、痛みのメカニズムを明らかにすることを目的とし、以下の知見を得た。 1,ペプチドの産生制御機構の解析1)NSTは、ヒト、マウス、ラット、ウシ脳やヒト脳脊髄液に存在し、すべての動物種のペプチドが、痛覚抑制作用を示した。2)NSTとNoc/OFQは共に視床下部に最も多く、脊髄後角の表層、三叉神経脊髄路、傍正中縫線核や視床下部の腹内側核に存在していた。3)各々のペプチドのC末端にGFPの変異体CFPまたはYFPの融合蛋白を作製し、前駆体mRNAが発現しているNG108-15細胞に導入した結果、細胞質と神経突起や神経終末部に存在していた。4)NSTとNoc/OFQのプロセッシングを調べる為に蛍光蛋白間のエネルギー移動(FRET)を導入した。(CFP)-(NST・Noc/OFQ)-(YFP)融合蛋白をNG108-15細胞に導入し、2つのペプチドがプロセッシングされた場合は、励起されたCFPは青色光を発するが、Cos細胞に導入しプロセッシングを受けない場合にCFPとYFPの距離が近い場合、励起されたCFPの光は、FRETによりYFPを励起し緑色光を発することを確認した。 2,NST受容体cDNAのクローニング及び情報伝達系の解析1)脳、脊髄膜画分においてNSTは、cAMP系とカップルしていた。2)現在、情報伝達系を指標に、NSTの受容体cDNAクローニングを行っている。
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