炎症性疾患における生理活性脂質の関与

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670137
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 和泉 孝志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70232361)
• 研究分担者: 清水 孝雄 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (80127092) ; 谷口 雅彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70260346) ; 横溝 岳彦 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (60302840)
• キーワード: 生理活性脂質 / 受容体 / ロイコトリエン / 炎症性疾患 / 遺伝子改変マウス

研究概要

ロイコトリエン(LT)類および血小板活性化因子(PAF)は多形核白血球、好酸球、リンパ球、マクロファージなどの炎症性細胞の遊走および活性化、血管透過性の亢進、気道平滑筋収縮、気道粘液分泌などの作用を持つ炎症性の生理活性脂質である。いずれも刺激に応じて細胞膜のリン脂質を前駆体として合成され標的細胞に作用し速やかに代謝される。その作用は、いずれも細胞膜に存在する受容体を介して行われる。本研究では、種々の遺伝子改変マウスを用いた種々の炎症モデルの解析、LTB4受容体欠損マウスを確立すること、まだ一次構造の解明されていない生理活性脂質受容体のcDNAクローニングを目的とした。
平成11年度は以下のような研究実績をあげた。
1.炎症モデル動物の作成と解析
PAF受容体トランスジェニックマウス、PAF受容体欠損マウス、cPLA2欠損マウスおよび正常マウスにおいて、酸気道投与およびはLPS投与による成人呼吸逼迫症候群(ARDS)モデルを作成、解析し、その成果を一部報告した。
2.LTB4受容体欠損マウスの確立
ターゲッティングべクターの構築を行い、ES細胞を形質転換し、ネオマイシン耐性株を選択し組み替えES細胞を得ることができた。しかしキメラ率の高いマウスが得られないため欠損マウスの作成には成功していない。
3.LTD4受容体のシグナルの解析
cDNAクローニングのためのアッセイ法(細胞内カルシウムの上昇反応、レポーター遺伝子アッセイ)を確立した。最近一次構造の報告された、ヒトLTD4受容体のマウスやモルモットのオルソログのクローニングに成功し、シグナルを解析しているところである。

研究成果

• [文献書誌] Noiri, E., Yokomizo, T. ,Nakao, A., Izumi, T., Fujita, T., Kimura, S., Shimizu, T.: "An in vivo approach showing the chemotactic activity of leukotriene B4 in acute renal ischemic-reperfusion injury"Proc Natl Acad Sci USA. 97. 823-828 (2000)
• [文献書誌] Nagase, T., Ishii, S., Kume, K., Uozumi, N., Izumi, T., Ouchi, Y., Shimizu, T.: "Platelet-activating factor mediates acid-induced lung injury in genetically engineered mice"J Clin Invest. 104. 1071-1076 (1999)
• [文献書誌] Toda, A., Yokomizo, T., Masuda, K., Nakao, A., Izumi, T., Shimizu, T., jita, T., Kimura, S., Shimizu, T.: "Cloning and characterization of rat leukotriene B4 receptor"Biochem Biophys Res Commun. 262. 806-812 (1999)
• [文献書誌] Fukasawa, K.M., Fukasawa, K., Harada, M., Hirose, J., Izumi, T., Shimizu, T.: "Aminopeptidase B is structurally related to leukotriene-A4 hydrolase but is not a bifunctional enzyme with epoxide hydrolase activity"Biochem J. 339. 492-502 (1999)
• [文献書誌] Masuda, K., Yokomizo, T., Izumi, T., Shimizu, T.: "cDNA cloning and characterization of guinea-pig leukotriene B4 receptor"Biochem J. 342. 79-85 (1999)
• [文献書誌] Izumi,T.,Yokomizo,T.,Igarashi,T.,Shimizu,T.jita,T.,Kimura,S.,Shimizu,T.: "Eicosaniods and Other Bioactive Lipids in Cancer,Inflammation and Radiation Injury 4"Plenum Publishing Corporation. 710 (2000)