ヒトp57^<KIP2>変異体cDNAをマウスに導入したトランスジェニックマウスを作成し、Beckwith-Wiedemann症候群のヒトモデル動物の作成を試みた。そのために、強制発現用プロモーターとしてpRc/CMVベクターを使用し、ヒトcDNA組換体の発現を試みた。用いた組換え体はpRDR2-1(野性型)、pDR2-1-6(CDK阻害ドメイン変異型)、pDR2-1-8(QTドメイン変異型)の3種類である。解析したマウスは2-1は10匹、2-1-6は5匹、2-1-8は17匹であった。2-1-6は産子数が少なく遺伝子に毒性がある可能性を示したが、他の2種類は産子数も少なくなく、しかも2-1-8は帝切で得た。しかし、結果はすべてのマウスでトランスジーン陰性であり予想しない結果であった。p57kip2のトランスジェニックマウスが得られない結果は英国のSuraniの研究室でも起きており、CDKインビターであるこの遺伝子は細胞・個体に毒性があるかもしれない。特に今回強力なプロモーターを用いたのが具合が悪かったのかもしれない。対策としては今後Cre/Loxシステムを用いたConditional transgenicsの必要があろう。 さらにp57Kip2に関してマウスに新たなcDNAを得たので報告する。バリアント(センスならびにアンティセンス)cDNAと命名し、すでに発見されている遺伝子の転写開始より約5kb上流よりスタートするセンスバリアントと、1kb上流から逆方向にスタートするアンティセンスバリアントcDNAである。共に母方遺伝子が発現しインプリンティングを受けている。センスバリアントは発生胎生前期に発現し成人では発現しない。一方、アンティセンスバリアントは成人で発現している。センスバリアントの開始から約1kb下流にCpG islandがあり、全体に渡って父方アリルのメチル化が観察された。
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