サイクリンキナーゼインヒビターp57^<KIP2>遺伝子はBeckwith-Wiedemann症候群の原因遺伝子である。その変異体が細胞及び個体レベルでどのような表現型を示すのかを明らかにするために、1)ヒト遺伝子の変異体を作成して細胞に感染させ形態学的、生化学的変化を観察する。2)ついで、変異体を発現するトランスジェニックマウスを作成し、その表現型を観察する。先ず細胞レベルでの変化を観察するために、アデノウイルスベクターに変異体cDNAを導入した。宿主としてG401、RDおよびSaOS細胞を使用し、導入変異体はAd/KIP2-1-8(p57^<KIP2>のC末変異体)およびコントロールとしてAd/KIP2-1(p57^<KIP2>の野生型)ならびにAd/lacZ(コントロール)を使用した。RD細胞を用いてたところ、蛋白の発現とp57^<KIP2>による抗体染色でコントロールと比べて染色が濃くなっているのが観察された。しかし細胞増殖に与える影響を観察したところ、抑制は変異体、野生体とも同程度であった。つまり、細胞レベルでは予想に反して野生型のp57^<KIP2>による特異的な細胞増殖抑制は観察されなかった。次に、ヒトp57^<KIP2>変異体cDNAをマウスに導入したトランスジェニックマウスを作成し、Beckwith-Wiedemann症候群のヒトモデル動物の作成を試みた。強制発現用プロモーターとしてpRc/CMVプラスミドベクターを使用し、ヒトcDNA組換体の高発現を試みた。用いた組換え体はpDR2-1(野性型)、pDR2-1-6(CDK阻害ドメイン変異型)、pDR2-1-8(QTドメイン変異型)の3種類である。得られた結果はすべてのマウスでトランスジーン陰性であった。今後の対策としてはCre/Loxシステムを用いたConditional transgenicsが必要であろう。
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