研究概要 |
1.Mint1,mint2,mint3に対する特異抗体の作製 Mint1,2,3に固有のアミノ酸配列を抗原にしてウサギ抗血清を作製し感度と特異性をイムノブロット法で確認した結果、複数の有用な抗体を得ることができた。これらの抗体を用いてmintに結合するタンパク質を現在解析中である。 2.Mint1,mint2の脳内分布の検討 抗体を用いた免疫組織化学法とin situ hybridization法を組み合わせ、脳内発現分布を検討した。Mint1は海馬、大脳辺縁系、自律神経系など限られた領域に強く発現していたが、mint2はより広範な神経組織に発現が見られた。いずれも神経細胞以外には発現していなかった。このことからmint1,mint2はともに神経細胞特異的タンパク質であるが神経細胞の種類により使い分けがなされ異なった機能を担っていることが示唆された。これは従来の生化学的知見とよく符号する。特異的な発現パターンがどのような細胞内機能と関連しているのか、特に小胞輪送との関係について現在さらに解析中である。 3.Mint1と遅発性神経細胞死の関係についての検討 Mint1が酸化ストレス下におけるタンパク質分解代謝異常に果たす役割を解析するためにマウス脳虚血モデルを利用した。このモデルでは海馬CA1領域の錐体細胞に遅発性細胞死を見る。これは酸化ストレスにより誘導された一種のアポプトーシスであると考えられており発症機序の解明が大きな関心を集めている。そこでmint1がその発症に関わっている可能性を検討した。Mint1は恒常的にentorhinal cortex,molecular layer of the dentate gyrus,mossy fibersに発現しているが虚血負荷後早期にmossy fibersでの発現がいったん著明に低下するが3日後には逆に亢進する、という2層性の変化を示す。発現亢進の時期は遅発性細胞死が始まる時期と一致する。このことからmint1を介する神経伝達物質の過剰放出が後シナプス側に過剰な刺激を伝えている可能性がある。従来よりいわゆる'neurotoxicity'が細胞死の原因ではないかと示唆されてきたがmint1がこれを媒介している可能性がある。現在さらに解析中である。
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