研究課題/領域番号 |
11670151
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
山田 治 川崎医科大学, 医学部, 助教授 (50104790)
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研究分担者 |
賀来 万由美 川崎医科大学, 医学部, 助手 (20319940)
和田 秀穂 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70191830)
八幡 義人 川崎医科大学, 医学部, 教授 (70069011)
三上 誠 川崎医科大学, 医学部, 助手 (90309550)
末次 慶収 川崎医科大学, 医学部, 助手 (60309549)
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キーワード | 先天性膜蛋白異常症 / 遺伝性球状赤血球症 / 膜蛋白発現調節異常 / β-spectrin / band3 / protein 4.2 / 5'-CpG-3'sites / メチル化 |
研究概要 |
赤芽球系の膜蛋白の発現はcascadeのごとく主要蛋白が順次発現することが知られている。それらの蛋白には明らかに発現のonとoffが存在すると考えられる。一方、先天性膜蛋白異常症、特に遺伝性球状赤血球症(HS)ではその病因遺伝子と推定される遺伝子異常が多数報告されている。従来までの我々の研究から、HSが単に膜蛋白の欠損によって発症するのみではなく、病因遺伝子に起因し遺伝子発現異常ないしは膜蛋白発現調節異常もまた発症病態の一つである可能性が高い。 赤芽球系の膜蛋白のうち、β-spectrin、band3およびprotein 4.2について、そのpromoter領域の5'-CpG-3'sitesのmethylationの解析を中心に検討した。その結果、1)正常ヒト末梢血単核細胞から得られたgenomic DNAを用いた場合、protein 4.2およびband 3遺伝子のpromoter領域では、ほぼ全てのCpG sitesがmethylatedであった。これに対し、β-spectrinでは検索した全てのCpG sitesがumethylatedであった。2)赤芽球系細胞分化過程における膜蛋白遺伝子のmethylationの関与を検討した。protein 4.2遺伝子は赤芽球系樹立培養細胞株(UT-7/EPO)の赤芽球はほぼ完全にunmethylatedであり、末梢血BFU-E由来の培養赤芽球はメチル化を示した。一方band3遺伝子では、すでにUT-7/EPOでも十分なメチル化を示していた。3)protein 4.2完全欠損症の末梢血単核細胞DNAを用いた検討結果では、band3遺伝子のpromoterではCpG site A〜Dでは、ほぼ100%に近くmethylatedであったが、sites G,K,Lではメチル化度の低下を認め、sitesによる変動が認めれた。4)欧米諸国と本邦とで遺伝子変異の出現頻度が大きく異なるankyrin遺伝子について、本邦HS症例におけるankyrin遺伝子異常を検索し、欧米の報告と比較検討した。その結果、病因遺伝子変異と推定されたのは、frameshift4種、nonsense mutation2種、abnormal splicing3種であった。特徴的には、band 3 mutaionと異なり、missense mutationが稀であり、mutationのhot spotsは認められなかった。 以上の結果より、赤芽球の分化・成熟に伴う膜蛋白発現と遺伝子発現の調整に関しての、正常ならびに欠損症等の異常の場合での基礎となる知見が得られたものと考えられる。特に、protein 4.2では本邦にその症例が非常に集積しているという国際的側面を踏まえても、本蛋白の機能と欠損によって出現する病態と関連する遺伝子調節異常の更なる詳細な検討が必要であると考えられた。
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