YB-1は細胞増殖に関与していることが知られているだけでなく、その他多くの機能を持っていることが推測されている。これまでYB-1がストレス応答で活性化される転写因子であることを報告してきたが、遺伝子の転写だけでなく損傷DNAを認識し、PCNAと分子会合することも見いだした。YB-1の標的遺伝子群を見ると細胞増殖に重要であることが示唆されることから、癌細胞の異常増殖との関連に興味が持たれている。そこで癌抑制遺伝子との分子会合を検討した。p53はYB-1の標的遺伝子であるMDR1遺伝子のプロモーター活性を抑制することから会合分子の候補として検討した。その結果、1.YB-1とp53の分子会合を証明し、その会合はYB-1のY-boxへの結合を阻害すること、またp53のp53結合配列への結合を増加させることをゲルシフト法で示した。また、標的遺伝子の発現への影響はMDR1とp21のプロモーターを用いたレポーターアッセイで行った。その結果、2.DNA結合の正負の制御に一致した結果を示した。一方、YB-1の持つその他の機能をGST融合蛋白として精製して解析した。その結果、1.YB-1がホモダイマーとなること、2.一本鎖のDNA、及びRNAに強く結合すること、3.さらに3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を持つこと、4.RNAに結合して翻訳を阻害することを明らかにした。これらの事実からYB-1が単に細胞増殖に必須の遺伝子発現に関与するだけでなく、モノマーもしくはダイマーとして各種の核酸に結合しその機能発現に関与すると考えられる。現在、YB-1がdamage detectorであることからdamage sensorとしてのp53のみならず、そのファミリー遺伝子と考えられるp73との分子会合の検討やドミナントネガティブクローンの発現により、YB-1の機能を詳細に解析する予定である。
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