研究課題/領域番号 |
11670153
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
菅野 仁 日本大学, 医学部, 専任講師 (70221207)
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研究分担者 |
三輪 史朗 財団法人沖中記念成人病研究所, 所長 (40034954)
相沢 信 日本大学, 医学部, 助教授 (30202443)
中川 滋木 日本大学, 医学部, 教授 (40059465)
小柳津 直樹 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (00282773)
小泉 勤 福井医科大学, 医学部, 助教授 (40126579)
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キーワード | 溶血性貧血 / 遺伝子治療 / トランスジェニックマウス / アポトーシス / フレンド細胞 |
研究概要 |
Pk-1^<slc>は赤血球(R)型ピルビン酸キナーゼ(PK)活性中心近傍の単一アミノ酸置換(Gly338Asp)により、基質親和性が著しく低下して溶血性貧血を発症するPK異常症モデルマウスである。赤血球数は正常対照の約50%に低下、脾臓では著明な赤芽球過形成を認めてその重量は野生型マウスの9倍以上に達する。われわれは昨年度までに、ヒトβグロビン遺伝子群の制御領域(μ'LCR)とR型PKプロモーターを用いてヒトR型PKを赤血球特異的に高発現するトランスジェニック(Tg)マウスを樹立した。今年度はPk-1^<slc>マウスに対する遺伝子治療効果を検討するため、genetic rescue実験を施行した。PK TgマウスとPk-1^<slc>マウスのF1でトランス遺伝子を持つ個体をPk-1^<slc>マウスと戻し交配し、得られたrescueマウス(変異PK遺伝子のホモ接合体でトランス遺伝子を有する個体)について検討を加えた。赤血球PK活性と赤血球数、ヘモグロビン濃度との間には正の相関を認め、反対に脾重量との間には負の相関があった。さらに脾臓の鉄沈着の程度は劇的な改善を認め、胚細胞への正常PK遺伝子導入と赤血球特異的高レベル発現が本症の根治療法になることが明らかになった。 フレンドウィルス感染Pk-1^<slc>マウス脾細胞から、赤芽球系細胞株SLC3およびSLC4を樹立した。SLC細胞は継代過程で著明なアポトーシスを起こし、その性質は酪酸やジメチルスルフォキシドによる赤血球分化誘導で著明に増加した。CBA系野生型マウスから樹立したフレンド細胞こ比べ、細胞内ATP濃度は低下しており、ミトコンドリア膜電位の低下を認めた。赤血球分化に伴いM2からR型へとPKアイソザイムがスイッチすることが赤芽球アポトーシスの抑制に関わっていて、R型PK遺伝子変異がSLC細胞のアポトーシスを惹起していると考えられた。
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