研究概要 |
申請者は神経栄養因子及び循環調節因子としての両方の機能を併せ持つユニークな神経ペプチドであるPACAP(Pituitary Adenylate Cyclase Activating Polypeptide)の生合成調節機構を明らかにする上で、遺伝子発現調節機序解明は必須となることから、平成11年度は10年度において単離したマウスPACAP遺伝子クローンについて特に5'上流の転写調節領域を中心として構造解析を行った。 (1)マウス肝臓由来遺伝子ライブラリーよりマウスPACAPcDNAをプローブとしてスクリーニングして得られたクローンについて、制限酵素マッピング及び塩基配列決定により、構造解析を行った。クローニングされたマウスPACAP遺伝子は6.5kbにわたり、5つのエクソンからなり、ヒト遺伝子とほぼ同一の構造を示した。マウス染色体上の座位を明らかにするため、FISH法を行い、マウス第17染色体E5に局在することを明らかにした。 (2)5'RACE,Ribonuclease protection assay及びプライマー伸長法によりその5'上流領域を解析し、転写開始点を同定したところ、転写開始点は主に3カ所あり、一つはTATA様モチーフの30bp下流に存在し、後2カ所にはhouse keeping遺伝子の転写開始部位によく見られるInr様配列が認められ、構成的発現と誘導的発現の2種類の発現様式を取りうることが示唆された。また5'上流調節域には、CRE,TRE,GHF-1,AP-1など様々な転写因子の結合サイトが認められ、本遺伝子発現が複雑に制御されていることが推察された。そしてalternative splicingにより少なくとも4種の異なった5'非翻訳領域を持つmRNAが脳内に存在することが明らかとなった。 (3)RT-PCR法によりマウス各組織におけるPACAP遺伝子発現を検討したところ、脳以外では副腎、胸腺において高発現を認めたが精巣では低発現であることを観察した。マウス遺伝子はヒト遺伝子と構造上の類似性が認められるものの、遺伝子発現の体内分布がヒトとは異なることから、その発現の種特異性が示唆された。
|