申請者は神経栄養因子及び循環調節因子としての機能を併せ持つ神経ペプチドpituitary aden ylate cyclase activating polypeptide(PACAP)の生合成調節機序を明らかにする上で、遺伝子発現調節機序解明は必須となることから、平成12年度は11年度において構造解析を行った5'上流の転写調節領域の機能解析を行った。 1.マウス脳においては、本遺伝子のエクソン1と2のalternative splicingにより少なくとも4種の異なる5'非翻訳領域を持つmRNAが存在することを明らかにしている。そのうち最上流の転写開始点近傍にあるTATA様モチーフについてさらに解析を進め、その上流に、ヒトの遺伝子においてもよく保存されている新たなTATA様モチーフを見出し、基本転写における両モチーフの機能的寄与を比較検討した。それぞれのモチーフ配列に点突然変異を導入し、ルシフェラーゼ遺伝子の上流につなぎC6細胞にてその基本転写活性を検討したところ、新たに同定した上流側のTATA配列の方がよりfunctionalであった。さらに、プライマー伸長法により、新たな最上流の転写開始点を同定することができた。 2.5'上流領域の転写活性をルシフェラーゼアッセイを用いて検討したところ、サプレッサーとして働く領域があり、神経選択的サイレンサーに相同性の高い配列が認められた。そこでこの領域をSV40プロモーターとともにルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に挿入し、その酵素活性を指標に転写活性を検討したところ、SWISS3T3細胞においてSV40のプロモーター活性を強力に抑制することを見出した。しかも未分化なPC12細胞でも同様の抑制作用が見られるものの、NGFにて分化したPC12細胞ではその抑制作用が減弱することを確認しており、PACAPの神経特異的発現の中核をなす転写調節エレメントである感触を得、その特異的結合因子の同定を進めている。
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