研究概要 |
申請者は神経栄養因子及び循環調節因子としての機能を併せ持つ神経ペプチドpituitary adenylate cyclase activating polypeptide(PACAP)の生合成調節機序を明らかにする上で、遺伝子発現調節機序解明は必須となることから、マウスPACAP遺伝子の構造解析及び5'上流の転写調節領域の機能解析を行った。 1.マウスPACAP遺伝子をクローニングし、構造解析を行ったところ、本遺伝子は6.5kbにわたり、5つのエクソンからなりヒト遺伝子とほぼ同一の構造を示した。また、FISH法により本遺伝子は第17染色体E5に局在することを明らかにした。 2.RT-PCR法によりマウス各組織における本遺伝子発現を検討したところ、脳以外では副腎、胸腺において高発現を認めたが精巣では低発現であり、ヒト・ラットの精巣における高発現とは対照的であり遺伝子発現の種特異性が示唆された。 3.5'RACE及びRNase protection assayによりその5'上流領域を解析したところ、転写開始部位は主に3カ所あり、その最上流の開始部位には2つのTATA様モチーフがあり、その上流領域には、CBP, Ap-1,GATA, GHF-1など様々な転写因子の結合サイトが認められた。後2カ所にはInr様配列を認め、本遺伝子が構成的発現と誘導的発現の2つの発現様式を取りうることが推察された。そしてマウス脳においては、3カ所の転写開始部位及び第1エクソンのal-ternative splicingにより少なくとも5種の異なる5'非翻訳領域を持つmRNAが存在することを明らかにした。さらに5'上流領域の転写活性をルシフェラーゼアッセイを用いて検討したところ、サプレッサーとして働く領域があり、神経選択的サイレンサーに相同性の高い配列が認められることからPACAPの神経特異的発現の中核をなす転写調節エレメントである感触を得、その特異的結合因子の同定を進めている。
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