研究課題/領域番号 |
11670164
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大谷 明夫 東北大学, 医学部・医学系研究科, 助教授 (30133987)
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研究分担者 |
仙波 秀峰 山形大学, 医学部, 助手 (00302092)
椎葉 健一 東北大学, 医学部・附属病院, 助教授 (90196345)
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キーワード | 大腸がん / CD8陽性リンパ球 / 腫瘍免疫 / 多変量解析 |
研究概要 |
これまでの大腸がん先進部に分布するマクロファージの血行性転移に関する抑制的役割の本質をさらに追及するため、以下の研究を実施した。すなわち、これらマクロファージが直接あるいは間接的に抗原提示細胞として機能している場合は、なんらかのエフェクター細胞が予想される。すでに我々は、それが腫瘍内に浸潤したCD8陽性T細胞であることをしめしている。これをさらに追求した。材料は連続200例の大腸がん手術摘出例である。フォルマリン固定、パラフィン包埋ブロックである。これを用い、CD8を染色した。癌内部、および癌先進部に分布するこれら細胞を顕微鏡200倍視野に接眼マイクロメータをおき、その中の陽性細胞数を定量した。それら定量値は中央値で二群わけし、生存率との関係を単変量と多変量解析でしらべた。ほかに調べた因子はステージ、癌の浸潤パターン、マクロファージの分布である。 [結果]癌内部に浸潤したCD8陽性T細胞は単変量、多変量解析ともに有意となり、独立予後因子であるとみなされた。癌先進部に分布するCD8陽性T細胞は単変量解析では有意であったが、多変量では有意にならず、ステージに吸収されたと推定される。また癌先進部マクロファージは生存率に影響をあたえなかった。 [考察]前回は血行転移を抑制する因子と考えた癌先進部のマクロファージは何ら生存率に影響をあたえなかった。大腸がん患者の生存を大きく左右するのがこの異時性血行転移であることを考えると不思議でもある。これは機能分子はB7-2といった補助刺激分子であり、今回測定したのはCD68というラインゾーム関連分子であるという差がでたのかもしれない。また、われわれの当初の報告では大腸がんあ中に浸潤したCD8陽性T細胞は多ければ多いほど生存率を良くすると考えたが、これは支持されなかった。なぜなら、より浸潤T細胞の値が大である平均値わけでは、多変量解析では有意ではなかったからである。今回症例数をふやし、また患者のフォローアップデータをみなおし、より詳細な検討の結果、大腸がんでは癌内部に浸潤したCD8陽性T細胞の数は独立予後因子であることをみいだし、腫瘍免疫の存在を大きく示した。今後の問題としては、機能の解明である。
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